月曜の朝、管理部長の机に主幹事証券から一枚のスケジュール表が届きます。そこには「直前々期(N-2)」「直前期(N-1)」「申請期(N)」という三つの帯が引かれ、内部監査の欄には「N-1 期首までに体制整備、N-1 期中に一巡実施」とだけ書かれていました。社員は 60 名、経理は 3 名。内部監査を専任で担える人はいません。
この場面は、IPO(新規株式公開)を目指す成長企業では珍しくない「よくある状況」です。会計監査、規程整備、予算統制、反社チェックと並行して、内部監査という「会社を内側から点検する仕組み」をゼロから立ち上げなければなりません。しかも上場審査では、立ち上げたこと自体ではなく「計画から改善までが一巡して回っているか」が資料で確認されます。
本記事では、N-2 期から申請期までを逆算した内部監査体制の構築ロードマップを、制度の根拠とともに解説します。東証の審査で何が見られるのか、なぜ「一巡の運用実績」が必要なのか、兼務体制で独立性をどう確保するのかを、記入例とあわせて整理しました。
この記事の要点
- 東証グロース市場の申請書類では、最近 1 年間および申請事業年度の「内部監査計画の立案から実施、報告及び改善等に至るまでの一連の内部監査資料」の写しの提出が求められる。N-1 期首には内部監査が動いている必要がある
- 体制は専任 1 名でも兼務でもよいが、自己の所属部署を自分で監査しない「相互監査」などで独立性を確保する
- 新規上場後 3 年間は内部統制報告書の監査証明が免除されうるが、報告書の提出義務は残る。資本金 100 億円以上または負債総額 1,000 億円以上の会社は免除の対象外
- ロードマップは「N-2 期で設計、N-1 期で運用実績、申請期で改善の定着」と三段階で考えると無理がない
IPO 準備で内部監査が求められる理由
上場会社に求められる「内部管理体制」とは
東京証券取引所は、上場審査の実質基準として「企業のコーポレート・ガバナンス及び内部管理体制の有効性」を掲げています。グロース市場の上場審査基準概要では、この項目は「コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること」と説明されています。ここで大切なのは「整備され」と「適切に機能していること」が並んでいる点です。規程や組織図を作っただけでは足りず、実際に回っている証拠が求められます。
内部管理体制を点検する役割を担うのが内部監査です。財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準(以下、内部統制基準)でも、内部監査人は「モニタリングの一環として、内部統制の整備及び運用状況を検討、評価し、必要に応じて、その改善を促す職務を担っている」と位置付けられています。つまり内部監査は、会社の仕組みが機能していることを示す「独立的評価」の担い手です。
なぜ「一巡の実績」が問われるのか
東証がグロース市場の申請会社に求める「各種説明資料」の記載項目には、内部監査について次の説明が並んでいます。現在の内部監査の体制(担当部署、担当人員の氏名・経歴・内部監査業務に関する資格)、内部監査の実施状況(対象範囲、重点監査項目、ローテーションの状況、手続き)、内部監査体制の今後の計画、三様監査の連携状況です。さらに添付書類として、最近 1 年間および申請事業年度の「内部監査計画の立案から実施、報告及び改善等に至るまでの一連の内部監査資料の写し」が挙げられています。
ここから読み取れるのは、審査側が見たいのは「監査をやりました」という報告書 1 枚ではなく、計画 → 実施 → 報告 → 改善というサイクルが最後までつながっているかどうか、という点です。指摘事項を出したまま放置していれば、内部監査が「機能している」とは言えません。この一巡を最近 1 年間(多くの場合 N-1 期)に完了させるには、N-1 期首に計画ができていなければならず、逆算すると N-2 期中に体制設計を終える必要があります。これが「N-2 期から」と言われる理由です。
会計監査の期間とも重なる
グロース市場の形式要件では、「新規上場申請のための有価証券報告書」に添付される監査報告書について、最近 1 年間とそれより前の期間の意見が求められています。実務上は N-2 期と N-1 期の 2 期間について監査法人の監査を受けるのが一般的で、会計監査の準備と内部監査の立ち上げは同じ時期にぶつかります。経理部門が決算早期化と監査対応で手一杯になる時期に、内部監査の設計を並行させる。この負荷の重なりを最初から見込んでおくことが、ロードマップを作る第一歩です。
N-2 期から申請期までのロードマップ
以下は、3 月決算の会社が N 期中の上場を目指すモデルケースを想定した全体像です。実際のスケジュールは主幹事証券・監査法人と協議して決めるものであり、ここでは考え方の型として示します。
| 時期 | 内部監査のテーマ | 主な成果物 | ほかの準備との関係 |
|---|---|---|---|
| N-2 期 前半 | 担当者の選任、内部監査規程の制定 | 内部監査規程、組織図(社長直轄)、職務分掌 | 監査法人のショートレビュー指摘への対応と並行 |
| N-2 期 後半 | リスク評価と N-1 期年間計画の策定、試行監査 | リスク一覧、年間監査計画書、調書様式 | 規程類(職務権限・稟議)の整備が進む時期 |
| N-1 期 前半 | 年間計画に沿った業務監査の実施 | 監査通知、調書、監査報告書 | 月次決算の早期化、予算統制の運用 |
| N-1 期 後半 | 改善状況の確認(フォローアップ)、監査役との連携 | 改善計画書、フォローアップ報告、三様監査の議事メモ | 主幹事証券の引受審査の準備 |
| N 期(申請期) | 2 巡目の監査、上場後体制への移行計画 | 申請期の監査資料、J-SOX 評価体制の準備状況 | 東証審査の質問対応 |

N-2 期:設計の年
N-2 期の目標は「N-1 期首に監査を始められる状態」を作ることです。最初に取り組むのは内部監査規程の制定です。規程には、内部監査の目的、組織上の位置付け(社長直轄であること)、監査対象と権限(資料閲覧・質問の権限)、報告経路、監査役との連携、フォローアップの手続きを書きます。規程の雛形は多く出回っていますが、自社の組織図と実際の報告ルートに合わせて書き換えないと、審査の質問で矛盾が生まれます。
後半には、翌期の年間計画を作るためのリスク評価を行います。部門ごとに「財務への影響」「不正の起きやすさ」「規程整備の成熟度」などを評価し、重点を決めます。進め方の詳細は リスクベース内部監査の始め方 で解説しています。可能であれば 1 部門だけ試行監査を行い、調書の様式や報告書の型を固めておくと、N-1 期の立ち上がりが滑らかになります。
N-1 期:運用実績の年
N-1 期は、審査で提出する「一連の内部監査資料」そのものを作る年です。年間計画に沿って全部門(または計画で定めた範囲)を監査し、報告書を社長に提出し、指摘事項への改善計画を受け取り、期末までにフォローアップで改善を確認します。重要なのは、改善の確認までを同じ期の中で終えることです。期末直前に監査を詰め込むと、改善確認が翌期にずれ込み、サイクルが閉じないまま審査を迎えることになります。
申請期:改善の定着と上場後への橋渡し
申請期には 2 巡目の監査を行い、前期指摘の再発がないかを確認します。同時に、上場後に求められる財務報告に係る内部統制(J-SOX)の評価体制をどう組むかを計画します。東証の説明資料にも「財務報告に係る内部統制の評価・報告体制の準備状況」という項目があり、内部監査部門が J-SOX 評価の実施主体になるのか、別チームを置くのかを説明できるようにしておきます。
体制の設計:人員・独立性・規程
体制パターンの比較
小規模な上場準備企業では、専任者を置けないことも多いのが実情です。代表的な体制パターンを比較すると次のようになります。
| 体制パターン | 概要 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 専任 1 名(社長直轄) | 内部監査室を設け専任者を配置 | 独立性の説明が明快。計画的に動ける | 採用コスト。1 名で全社を回す工数の見積もりが必要 |
| 兼務者による相互監査 | 管理部員が営業部を、営業部員が管理部を監査 | 追加採用が不要 | 自己監査の回避ルールを規程で明文化。監査品質のばらつき |
| 外部委託(アウトソース) | 監査の実施を外部専門家に委託し、社内責任者を置く | 専門性を早期に確保 | 社内に責任者を置き、計画・報告の主体は会社であることを明確に |
| 専任 1 名 + 外部の共同実施(コソース) | 社内専任者と外部専門家が共同で実施 | 立ち上げ期のノウハウ移転 | 委託範囲と調書の帰属を契約で整理 |
どのパターンでも共通する原則は、監査する人が自分の業務を監査しないことです。内部統制基準は、経営者が内部監査人の身分等について「内部監査の対象となる業務及び部署から独立し、当該業務及び部署に対し直接の権限や責任を負わない状況を確保することが重要」としています。兼務者が自部門を監査すれば、この独立性を説明できません。相互監査を採る場合は、監査対象と担当者の組み合わせを表にして規程の別表や年間計画に明記し、「誰が誰を監査しないか」を見える形にしておきます。
なぜ「社長直轄」なのか
内部監査部門は社長直轄とするのが一般的です。これは、監査対象となる部門長より上位の立場から報告を受ける人がいないと、指摘事項が握りつぶされるおそれがあるためです。2023 年に改訂された内部統制基準では、さらに内部監査人が「取締役会及び監査役等への報告経路を確保する」ことの重要性が明記されました(改訂の全体像は J-SOX 改訂のポイント を参照)。上場準備の段階から、監査結果を監査役にも共有する運用を組み込んでおくと、上場後の体制にそのままつながります。
規程と実務の一致
審査の場面で指摘されやすいのは、規程に書いたことと実際の運用がずれているケースです。たとえば規程で「監査報告書は監査終了後 2 週間以内に社長へ提出」と定めたのに、実際には 1 か月以上かかっている、といった状態です。規程は背伸びをせず、自社が守れる内容で書き、守れなかった場合は規程を見直すか運用を改めるかを判断します。規程と実績が一致していることが、「機能している」ことの最も分かりやすい証拠になります。
最初の年間計画と運用実績の作り方
年間監査計画の記入例
N-1 期の年間計画は、すべての部門を 1 年で一巡する設計にするのが基本です。以下は社員 60 名規模の架空のモデルケースの記入例です。年間計画の書き方全般は 年間内部監査計画書の書き方 も参考にしてください。
| 対象部門 | 時期 | 重点監査項目 | リスク評価 | 担当 | 想定工数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業部 | 5 月 | 受注から売上計上までの証憑整合、与信管理 | 高 | 内部監査担当 A | 8 人日 |
| 購買・外注管理 | 7 月 | 発注権限の遵守、検収記録、相見積もり | 中 | 内部監査担当 A | 6 人日 |
| 経理部 | 9 月 | 月次決算手続、仕訳承認、固定資産管理 | 高 | 管理部兼務者 B(経理と別チーム) | 7 人日 |
| 人事・労務 | 11 月 | 勤怠管理、残業申請、入退社手続 | 中 | 内部監査担当 A | 5 人日 |
| 情報システム | 12 月 | アカウント管理、権限変更の承認 | 中 | 内部監査担当 A+外部専門家 | 6 人日 |
| フォローアップ | 1〜2 月 | 全部門の改善状況の確認 | — | 内部監査担当 A | 6 人日 |
| 経営報告 | 3 月 | 年間総括を社長・監査役へ報告 | — | 内部監査担当 A | 2 人日 |
計画のポイントは、フォローアップと年間総括を期末前に独立した行として確保していることです。多くの立ち上げ企業は監査の実施だけを並べて計画を作り、改善確認の時間を取り忘れます。
監査手続と調書
監査手続は、質問・閲覧・観察・再実施の組み合わせで設計します。たとえば営業部の監査で「受注から売上計上までの証憑整合」を見る場合、期中の売上取引から一定件数を抽出し、注文書・出荷記録・請求書・売上計上日の一致を確かめます。抽出件数の考え方は 内部監査のサンプル数はなぜ 25 件なのか や サンプル数計算ツール で確認できます。
調書には「何を、どの資料で、何件確かめ、どんな結果だったか」を第三者が追えるように残します。審査では調書そのものまで確認されることがあるため、結論だけでなく手続と証跡の対応関係を明確にしておくことが大切です。書き方は 監査調書の書き方と保管ルール で詳しく扱っています。
発見事項と改善計画の記入例
報告書では、発見事項を「事実・基準・原因・影響・提言」の要素で書くと、改善計画につなげやすくなります。以下は架空のモデルケースです。
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 発見事項 | 抽出した受注 25 件のうち 3 件で、注文書の受領前に出荷が行われていた |
| 基準 | 販売管理規程第 12 条「出荷は注文書または受注承認後に行う」 |
| 原因 | 繁忙期に電話受注を優先し、注文書の後追い回収を担当者任せにしていた |
| 影響 | 取引条件の争いが生じた場合に請求根拠が弱くなる。架空売上の温床となるおそれ |
| 提言 | 電話受注時の仮受注登録と、注文書未回収リストの週次確認を設ける |
| 改善計画(部門回答) | 7 月末までに仮受注登録画面を追加し、営業課長が週次で未回収リストを確認する |
| フォローアップ結果 | 1 月に 10 件を再抽出し、全件で注文書受領後の出荷を確認。完了とした |
この一行一行がそろっていることが、東証が求める「立案から実施、報告及び改善等に至るまで」の証跡になります。フォローアップの運用は 発見事項フォローアップの運用 を参照してください。
J-SOX との関係:上場後 3 年の監査免除をどう読むか
免除されるのは「監査」であって「評価」ではない
平成 26 年の金融商品取引法改正により、新規上場企業は上場後 3 年間、内部統制報告書に対する公認会計士等の監査証明を受けないことが選択できるようになりました(金融商品取引法第 193 条の 2 第 2 項第 4 号)。ただし、上場日の属する事業年度の直前事業年度の貸借対照表で資本金が 100 億円以上、または負債総額が 1,000 億円以上の会社は対象外です(内部統制府令第 10 条の 2)。上場日が事業年度開始後 3 か月以内となる場合の起算日の特例も政令で定められています。
誤解されやすいのは、免除されるのが監査人による「監査証明」だけだという点です。経営者が財務報告に係る内部統制を評価し、内部統制報告書を提出する義務は、上場後最初の事業年度から生じます。つまり申請期には、上場直後の決算期末を基準日とする評価をどう進めるかの準備が必要です。

評価の担い手をどう決めるか
J-SOX 評価の実施主体は会社によって異なりますが、上場準備企業では内部監査担当者が評価も担うことが少なくありません。この場合、業務監査と J-SOX 評価の工数が重なるため、N 期の年間計画では両者の作業を統合して設計します。たとえば売上プロセスの業務監査で行うサンプルテストを、J-SOX の運用評価と兼ねるように手続を組めば、重複を減らせます。
J-SOX の文書化(業務記述書・フローチャート・RCM)の作り方は J-SOX 3 点セットの作り方 で解説しています。上場準備の段階で文書化の型を作っておくと、監査免除期間が終わって監査人の監査を受ける際にも慌てずに済みます。
免除期間を「猶予」と考えない
監査免除は負担軽減のための制度ですが、内部統制の不備が免除されるわけではありません。上場後に開示すべき重要な不備が見つかれば、内部統制報告書で開示が必要になります。上場直後は事業拡大や人員増加で統制が崩れやすい時期でもあり、免除期間中こそ内部監査がモニタリングの役割を果たす意味は大きいと言えます。
三様監査と審査対応
三者の役割分担を説明できるようにする
東証の説明資料では「三様監査(監査役監査、内部監査、公認会計士又は監査法人による監査)の連携状況」の説明が求められます。三者はそれぞれ目的が異なります。監査役は取締役の職務執行を監査し、監査法人は財務諸表の適正性に意見を述べ、内部監査は経営者の指示のもとで業務と内部統制を点検します。役割の違いと連携の方法は 三様監査とは? で詳しく整理しています。
連携の実績としては、四半期に 1 回程度の三者ミーティングの議事メモ、監査役への内部監査報告書の共有記録、監査法人のマネジメントレターに対する内部監査のフォローアップなどが挙げられます。形式的な会議を重ねるよりも、「監査法人の指摘を内部監査が翌期の重点項目に反映した」のように、情報が次の行動につながった例を示せると説得力が増します。
審査の質問に備える
審査では、内部監査担当者本人に質問が向けられることもあります。想定しておきたい質問は、重点監査項目をどう選んだか、兼務の場合に独立性をどう確保しているか、指摘事項の改善をどう確認したか、上場後の体制をどう拡充するか、などです。回答の根拠がすべて資料に残っていれば、担当者が緊張していても筋の通った説明ができます。
よくある失敗と対策
| 失敗 | なぜ起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| N-1 期の途中から監査を開始し、一巡しないまま審査を迎える | 規程制定や人選が遅れ、計画が後ろ倒しになる | N-2 期中に規程と計画を完成させ、N-1 期首に最初の監査通知を出す |
| 兼務者が自部門を監査している | 人手不足で担当割りを後回しにする | 相互監査の組み合わせ表を規程の別表や年間計画に明記する |
| 指摘事項の改善確認がない | 報告書提出で「完了」と考えてしまう | 年間計画にフォローアップ期間を独立して確保する |
| 規程と運用がずれている | 雛形をそのまま採用している | 規程は自社で守れる内容で書き、実績とのずれを四半期ごとに点検する |
| 調書が結論だけで手続が追えない | 報告書の作成を優先し調書を省略する | 手続・件数・証跡・結論の欄を持つ調書様式を最初に決める |
| 監査が形式的なチェックリスト消化になる | リスク評価をせずに全項目を均等に見る | 部門別のリスク評価に基づいて重点項目を絞り、工数を配分する |
失敗の多くは「時間の見積もり不足」から生まれます。内部監査は会計監査や規程整備と並行するため、担当者の稼働が想定を下回りがちです。N-2 期のうちに、担当者が月に何日を内部監査に充てられるかを具体的な数字で確認しておくことが、最も効果的な予防策です。
よくある質問
Q1. 内部監査の担当者に資格は必要ですか
法令や上場規則で特定の資格が必須とされているわけではありません。ただし、東証の説明資料では担当者の経歴や「内部監査業務に関する資格」の記載が求められるため、専門性をどう担保しているかは説明が必要です。公認内部監査人(CIA)や内部監査士(QIA)などの資格取得を計画に入れる会社もあります。資格の概要は 内部監査人のキャリアと資格 を参照してください。
Q2. 外部委託だけで内部監査を運用してもよいですか
実施を外部の専門家に委託すること自体は可能です。ただし、内部監査は経営者のモニタリング機能の一部であり、計画の承認や報告の受領、改善の指示は会社が主体となって行う必要があります。社内に責任者を置き、外部委託先の成果を会社としてレビューする体制を作ることが重要です。
Q3. N-2 期から準備が間に合わない場合はどうすればよいですか
上場スケジュールは主幹事証券・監査法人との協議で決まるため、まずは早めに相談することをおすすめします。内部監査は「一巡の実績」が求められる性質上、短期間で取り戻すことが難しい領域です。スケジュールを見直すか、外部の共同実施で立ち上げを加速するかを検討します。最終的な判断は、自社の状況と関係者との協議によります。
Q4. 子会社がある場合、子会社も監査対象にすべきですか
グループで上場する場合、子会社の管理状況も内部管理体制の一部として見られます。東証の説明資料にも「子会社及び関連会社に対する管理方法」の項目があります。重要な子会社は年間計画に組み込み、規模や距離に応じて往査とリモート監査を組み合わせます。進め方は 子会社・海外拠点の内部監査 で解説しています。
まとめ
IPO 準備における内部監査は、「作ること」より「回っていることを示すこと」が問われます。東証が求める「一連の内部監査資料」を N-1 期に揃えるために、N-2 期で規程・人選・リスク評価・計画を完成させ、N-1 期で計画から改善確認までを一巡させ、申請期で改善の定着と上場後の J-SOX 評価体制への橋渡しを行う。この三段階で考えると、限られた人員でも無理のない計画が立てられます。
次の一歩としては、まず自社の決算期から N-2 期首・N-1 期首の日付を書き出し、そこから逆算して規程制定と計画策定の期限を決めてください。あわせて リスクベース内部監査の始め方 と 年間内部監査計画書の書き方 を読むと、最初の計画づくりが進めやすくなります。上場準備の内部監査体制づくりについてのご相談は お問い合わせ からお寄せください。
参考資料
- 日本取引所グループ「上場審査基準概要(グロース市場)」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/listing/02.html
- 東京証券取引所「新規上場申請者に係る各種説明資料の記載項目について(グロース市場)」
- 東京証券取引所「新規上場ガイドブック(グロース市場編)」 https://www.jpx.co.jp/equities/listing-on-tse/new/guide-new/02.html
- 企業会計審議会「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の改訂について(意見書)」(2023 年 4 月 7 日) https://www.fsa.go.jp/news/r4/sonota/20230407/20230407.html
- 金融商品取引法 第 193 条の 2 第 2 項第 4 号
- 財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令 第 10 条の 2



